角川ドワンゴ学園「N高等学校」とは?特徴と現役通信制高校生による見解
N高等学校とは?
「普通の高校生になって将来どうするの?」
これがN高等学校のキャッチコピーです。
現代に生きる私達高校生の不安とニーズをよく理解しているからこそ作れる秀逸なコピーだと思います。
果たして、N高等学校は日本の教育システムを改革する時代の先駆けとなるのでしょうか?
まずは、学校の概要とシステムからご覧ください。
学校の概要
このページを見て下さっている方は既にご存知かもしれませんが、N高等学校は「ニコニコ動画」を運営する「ドワンゴ」と、「電撃文庫」など出版・メディア事業を手掛ける「KADOKAWA」が共同で設立する予定の学校法人です。
2016年春より運営がスタートされる予定ですが、学校法人としてはまだ設置認可申請中となっています。
かといって、設置認可が容認されないということもまずないでしょう。
2年ほど前からネット上で「ドワンゴが高校を作るらしい」と噂になっており、多くのメディアから動向が注目されています。
N高等学校は通信制高校であり、法律でもしっかりと高等学校として認められます。
卒業すれば全日制の高校と何も変わらない高校卒業資格を取得することができるということです。
日々の学習はネットを活用した自宅学習が基本となり、履修している科目のリポートをこなすことで単位修得に近づきます。
自宅以外での学習、登校は年に5日程度しかありません。
1年に1度まとめて、5日間の登校が沖縄の本校で行われます。
国語や数学などの一般的な科目の授業もありますが、沖縄ならではの特別授業も予定されているようです。
そして、1人1人の個性を伸ばすことを学校の指針として掲げており、プログラミング・美容・イラスト・ゲーム・デザイン・調理などのバリエーション豊富な課外授業が用意されています。
やりたいこと・好きなことに高校3年間の時間を費やし、人生を生きていくための武器にするという理念です。
入学時には目指したいものが明確にわからなくても、様々な授業に参加して自分のやりたいことを見つけることができるようなシステムにもなっています。
参考動画
学習システムと学費
N高等学校での学習の一環として、プログラミングやイラスト作成などの課外授業があることは上で述べましたが、それとは別に「セレクトコース」という専門分野に特化した通学コースを受講することも可能です。
ただし、これはN高等学校と提携する「Vantan」という企業が運営しているコースであり、N高等学校の学費とは別に授業料がかかります。
高卒資格を取得するための勉強や簡単な課外授業をN高等学校で受け、専門的かつ本格的な一定分野の学習を「セレクトコース」で行う、というスタイルが推奨されているようです。
選べるコースは30分野にまで上り、特定の分野だけを集中して受講することも、幅広い分野を受講して様々な経験を積むこともできるようになっています。
IT、ゲーム、ファッション、美容、調理、製菓などの分野が用意されています。
N高等学校の学費
1年次 | 2年次 | 3年次 | |
入学金 | 50000円 | 0円 | 0円 |
授業料 | 125000円 | 125000円 | 125000円 |
施設設備費 | 50000円 | 50000円 | 50000円 |
教育関連諸費 | 25000円 | 25000円 | 25000円 |
就学支援金 | -120300円 | -120300円 | -120300円 |
小計 | 129700円 | 79700円 | 84512円 |
※授業料は25単位履修として計算
※就学支援金は世帯年間所得額910万円以下として計算
+α 「セレクトコース」の学費
設備充当費 | 授業料 | 実習日 | 合計 | |
週1通学コース | 6万円 | 16万円 | 3万円 | 25万円 |
週3通学コース | 15万円 | 42万円 | 8万円 | 65万円 |
週5通学コース | 22万円 | 70万円 | 13万円 | 105万円 |
※出願料別2万円、入学金別5万円
N高等学校に対する私の考え
昔は、通信制高校といえば「発達障害を持つ子」「家庭の事情が複雑な子」が通うところだというイメージが強かったようです。
しかし、現在は教育システムの転換期を迎えており、通信制高校に通う学生が徐々に増えてきています。
みんなと同じ時間に同じことを学ぶ、という方針は廃れつつあるわけですね。
就職の一括採用システムも変わりつつありますから、時代の流れとしては当然なことかもしれません。
これからの日本では、「みんなと同じことができる人間」ではなく、「自分特有の個性を持ち合わせている人間」が優遇されるようになるでしょう。
私にとってこれはごくごく自然なことですが、適応できない大人の方もいるようです。
「自分の武器をもっていること」「特定分野でスペシャリストであること」が求められる時代がすぐそこまで来ています。
N高等学校は、そんな時代の先駆けになる教育機関かもしれません。
自分の個性を発掘することができ、特定の分野で個性を磨くこともできる。
全日制の高校を選ばずにN高等学校のような学習方法を選べば、「個性力」で多くの同級生の上をいくことでしょう。
時代の流れに上手く乗って、ある種の成功を収めるまでに成長できる可能性は充分にあります。
ただ、N高等学校にはやはり懸念すべき点があります。
それは、当然のことですが、学校として教育の経験が浅いということです。
運営する理事会のこともそうですし、教師においても同じことが言えます。
「期待して入学したのに授業がめちゃくちゃ…」「手続きに関するミスが多い…」というようなこともあるかもしれません。
1期生として入学するなら、ギャンブル要素がどうしても加わってしまいます。
しかし、教育者の経験が浅いという不安要素は、良い方向にも転がりうると私は思っています。
N高等学校に限らず、通信制高校の教育理念は「自立」です。
N高等学校は教師陣が未熟なことで、学習の何たるかを学校全体で追及していけるような教育機関になるかもしれません。
教師だけでなく生徒一人一人が学校を支えていくという意識を持つ、すなわち「自立」です。
上手くいけばN高等学校は、ポジティブな発想で成長し続けるような生徒を作り出し、世間をアッと驚かせることでしょう。
最後に、ここまで私は「N高等学校」に肯定的な意見を向けてきましたが、一つだけ言うことがあります。
それは、特定分野の「スペシャリスト」を目指す環境はN高等学校でなくても良いということです。
当たり前のことですが、一度心を揺さぶられるとその選択肢しか考えられなくなるのが人間の性です。
イラストの練習なら自宅だってできますし、プログラムの勉強だって独学でも問題ありません。
メリットとデメリットを考慮しつつN高等学校へ入学するのは良いと思いますが、「私はどうしてもN高等学校に入らなくてはいけないんだ!」と妄信的に考えるのはやめましょう。
N高等学校はいかんせん現代の若者の心情を理解しているものですから、キャッチコピーや広告にもついつい惹かれてしまうものです。
自分は本当にN高等学校に入らなくてはならないのか、他の道もあるのではないか、とよく検討してみてはいかがでしょうか。